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2014.08.30

[本][統計]『「ニセ医学」に騙されないために』と2×2分割表

  『「ニセ医学」に騙されないために』(NATROM著、メタモル出版)を読んだ。知らないことも多く勉強になった。
(本自体の主な趣旨からは少し外れるかもしれないが)「ニセ医学」には、2×2分割表でみると、問題のものの効果を示すにはデータが欠落しているものが少なくないと感じた。
 2×2分割表は、統計的なデータの解析ではよく登場する、最も基礎的かつシンプルなデータの構造の1つである。”ある”と”ない”のような2つの場合しかとらない要因があると、4つの場合があることになる。この4つの場合のそれぞれに該当する”もの”の数(一番よく出てくるのは、ヒトの人数はじめ生物の個体数だが、生物の数でなくてもよい)を2×2の行列の形にまとめたもので、以下のようなものである、
2by2contigtable1a
上の例では2つの要因は、1つが”Xである/Xでない”で、もう1つが”Yである/Yでない”である。たとえばXでありYでもある”もの”の数がAである。
 2×2分割表は、効果が定性的に測られるときに、ある実験処理と対照区を比較するような場合によく登場する。この場合には、以下のようになる
2by2contigtable02
たとえば、ある実験処理をしたらYである割合が高くなることを調べたいなら、その実験処理を行わない対照でのYである割合と比べる必要がある。上の表だと、A/(A+B)とC/(C+D)を比べる必要がある。実験処理をしたときの数であるAとBがわかっただけではその実験処理に効果があるかどうかはわからない。対照でも同じくらいの割合でYであるかもしれないからである。また、実験処理をしたらYであった例がたくさんあっても、実験処理の効果を示すことにはならない。対照での割合がわからないことに加えて、Aが大きくてもBも大きければYである割合は高くはないかもしれないからである。
 2×2分割表での4つの数がそろわないと実験処理の効果は示せないというのは、おそらく自然科学をはじめとする分野で実験や調査のデータの解析をする際には、ごくごく常識的なことだろう。

 「ニセ医学」の場合には、以下のような2×2分割表を考えるといいだろう、
2by2contigtable03

病気に効果があると主張されるもの(方法でも同じである)Zがあると症状が改善された人がたくさんいるというのは、2×2分割表の4つの数のうち1つだけ(上の表だとAだけ)しかわからない場合にあたる。Zありでも症状が改善されなかった人数(B)やZなしの対照でのそれぞれの人数(CおよびD)がわかることが、Zが症状改善に効果があることをいうためには必要であり、Aだけでは効果について何も言えない。

Zがあると高い率で症状が改善した、すなわちZありで症状が改善した人が改善しなかった人に比べてかなり多かったというのは、2×2分割表では4つの数のうち2つだけ(AとB)しかわかっていないことにあたる。CとDが必要であり、それは対照との比較が必要であることにあたる。

 Aだけしかわかっていない場合にZの効果があるという誤解はしそうもないと思うかもしれない。だが、おそらく、よく注意していないと意外に誤った印象ができやすいと思う。たとえば、テレビで視聴者に何かの動作をしてもらいその動作後に体が軽く感じたら指定の電話番号に電話してくださいと呼びかけたとする。たくさんの電話がかかってきたらその動作に体を軽く感じさせる効果があるような印象を持つ人は少なくないだろう。非常に多数の電話がかかってきたとしてもそれは、上記のAだけがわかったにすぎない。あと3つの数がわかる必要がある。その動作後に体が軽く感じなかった人数(上記のB)、その動作をしなかった人で体が軽くなったと感じた人数と感じなかった人数(上記のCおよびD)がわかる必要があるのである。

 2×2分割表は統計的なデータ解析ではもっとも基礎的なものの1つで、シンプルであるけれども、結構役に立つと思った。ただ、『「ニセ医学」に騙されないために』に出てくる例に立ち向かうためには、それだけでは充分ではなく、対照の取り方(盲検と二重盲検をはじめ)などの他の知識も必須になるだろう。
 2×2分割表の分析についてはよくわかっており、統計的なデータの解析の教科書を見ればよい。予備知識を要求されるが、『離散多変量データの解析』(柳川尭著、共立)や『カテゴリカル・データ解析入門』(アグレスティ著、サイエンティスト社)は、2×2分割表の分析について詳しいだけでなく、そこからの発展も扱われている。


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2014.08.28

[その他]夏の甲子園(野球)の大記録

 高校野球の、夏の甲子園大会の破れそうもない大記録と言えば、嶋清一の準決勝・決勝連続ノーヒットノーランがある(嶋清一[海草中]は明治大学に進学後、学徒出陣しベトナム沖で戦死)。同じく、嶋清一の、大会5試合連続完封は、その後一度だけ達成されている(福嶋 一雄[小倉高]により)。

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2014.08.27

[鳥だの森だの]気象庁の高解像度降水ナウキャスト

 気象庁の短期降水予報が新しくなっている、ドップラーレーダーが新しくなったのに加えて、国土交通省のXバンドレーダーの情報なども使っているとのことである。野外での調査では、短時間後の予報でもかなり助かることは多い。
 気象庁のページはこちら

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2014.08.17

[福岡]薬院大通

 薬院大通という駅が福岡市営地下鉄にあり、そのそばには同名の交差点もある。薬院大通はいかにも道路の名前のようにみえる。しかし、その周辺で、少なくとも公式・半公式には、薬院大通りと呼ばれている道路はないようである。福岡市では、市などが定める道路の愛称で○○大通りという例はあまりないものの、姪浜大通りという例がある。
 地下鉄の駅名はその近くに以前あった西鉄の路面電車の駅の名を引き継いでいるようである。

 さて、古い地図(たとえば国土地理院の地形図でもわかる)をみると、薬院大通という名前は住所として使われており、高宮通りの両側がそれである(道路の両側の細長い範囲が同じ町名になるのは名古屋など他の場所でも少なくない)。それからすると、薬院大通りとは高宮通り(といま呼ばれている道)のこと(おそらくはそのうち城南線とぶつかる付近)と考えてよさそうである。

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[その他]新村出と萩の乱

 広辞苑で知られる新村出は、萩の乱が起こる3週間ほど前に山口県で生まれている。父である関口隆吉がそのとき山口県令だったためである。県令は1986年に県知事という名前に変わる。山口県令は3人で、初代と二代目(関口隆吉)はいずれも旧幕臣である。

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