昆虫にも人気・不人気があり、トンボは人気のある側だろう。(海は別として)水のあるところにはついてまわる。そして(日本では)図鑑に載っていない種に出会うことは少なく、種数もやたらに多くはないが少なくもない。奇怪な姿勢による交尾、ヤゴの餌とり、オスのなわばり行動などに見入った経験のあるひとも多いだろう。トンボの図鑑はかなり頼りになることが多いが、トンボの研究者なら『これはどうなっているのだろう』とか『これについてはどんな研究があるのだろう』などと思ったら、P. S. Corbetの“Dragonflies: Behavior and Ecology of Odonata”を開くだろう。1999年に出版されたこの本は実に頼りになる。(amazon.comで5つ星)
truly authoritativeがNatureの書評での形容であり、one of the truly great entomological booksがBiological Conservationの書評での評価である(ここに雑誌や新聞などを中心に書評が集められている)。
この本の日本語訳が、もうすぐ出版される『トンボ博物学』(海游舎)である。私も訳者の一人なので、おすすめするのは少しはずかしいような気もするが、頼りになる本の日本語訳である。
さて、日本語のトンボに対応する普通の英語はないようである。odonateはたしかに日本語のトンボと内容的には対応するが”トンボ目の”といった感じである。どうしても日本語で言うトンボを指したいときには、dragonflyということもある(Corbetも本の題名ではそうしている)が、dragonflyはシオカラトンボやアキアカネ、オニヤンマといった前翅が後翅よりも大きいトンボのことで、イトトンボの仲間やカワトンボ、あるいは巨大なミヤマカワトンボといった前翅と後翅の大きさが変わらないトンボたちはdamselflyと呼ぶのが普通である(ハチのwaspとbeeみたいである)。そこで、ときどき英語の本のタイトルにdragonflyとあるので買ってみると、イトトンボの仲間は登場しなかったりする。Corbetの上記の本は(したがって、『トンボ博物学』は)そういうことはない、dragonflyもdamselflyも(すなわちトンボ全体を)カバーしている。
やや内輪話など追加予定。
最近のコメント