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2005.06.03

[大学]テニュア

 テニュア(tenure)とは、聞きなれない言葉かもしれないが、大学教員が終身雇用されることである(終身雇用権と訳されるのが普通)。とくに悪いことをしなければ、定年まで勤められることと考えておいて良い。アメリカの割と若い研究者と話をしていると、テニュアが説明を要しないことばで、テニュアをとることが大きな目標であることがわかる。終身雇用に名前がついているということは、そうでない職があるということである。博士学位をとってすぐにつく職は期限があるのが普通である(と皆言う)。
 日本ではしばらく前まで大学教員は終身雇用が普通だった。ここのところ、任期制を導入して、変化が激しく進んでいる。現時点では、任期制を一部のポストに導入しているところ、導入していないところ、全ポストを任期制にしているところとさまざまである。私が働いている大学でも全ポストを任期制にしている学部がある。
 3年とか5年といった任期(要するにその期間しか雇ってくれない)があるのと、終身雇用とでは、給料などが同じでも、労働条件は大きく異なり、職の魅力はまるでちがう。終身雇用の方が魅力が大きいのは明らかだろう。プロスポーツ選手が長期間契約を求めるのと同じだろう。任期制とテニュア制度の差は当人にとっては天地ほどもあろうか。
 日本では、「全ポスト任期制」にも見られるように、教授も任期制というところがあちこちにある。また、任期制こそ流動化による活性化の切り札とまだ考えている人も少なくないようなので、まだ増える可能性がある(私も”流動”しているが、異動すると出費も多く時間もとられてコストは大きい。本気で流動化による活性化をしたいのなら、異動した人に異動に要した費用の実費を支給し、新しい研究室立ち上げの臨時研究費を出すようにするのが効果的だー北風より太陽というわけです)。
 さて、まさかアメリカでは任期制がほとんどだと思っている人は多くはないだろうが(”競争的なアメリカンやっぱりナイス”という人はいるだろうから)、アメリカではどうなのだろうか。文部科学省のサイトには、あっさりとまとめられている。教授の96.2%、准教授の83.6%がテニュア付きだそうだ。そして、全教員で見ると62.3%がテニュア付きとのことである。約9割の大学でテニュア制度を採用しているそうだ。他の国での制度も載っているので、関心のある方は必読だろう。
 任期制には再任制度(もう1任期雇ってもらえる)があるところもある。再任が甘美に見えても実は”激辛”であるのは、外部から招かれた委員がみな再任OKと言っても再任拒否された京大(再生研)の例を見てわかる。それに、かりに、学部の有力教員(これは私の働いている学部の話ではない)が、キミは任期制になっても大丈夫だよ再任されるよ、といってもその人が再任審査のときにいるとは限らないし、その人が決めるものでもない(その人個人が決めるなら有力教員ではなく独裁者か王だろう)。

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